シグマ10のインプレッションレポート

シグマ10のインプレッションレポート

NEW GEAR IMPRESSION

ADVANCE SIGMA 10 

REPORT : Masayuki Matsubara

1989年のデビュー以来パイロットを魅了し続け、根強いファンが多く、パラグライダー史で最も永い歴史を持つシグマシリーズ。

28年の歳月を経て10世代目となるシグマ10が完成した。

シグマ9からは全く新しいプラットフォームで成り立ち、パフォーマンスの大きな飛躍に成功したとのこと。早速インプレッションをしていこう。


スポーティーで軽快、
最小の操作で正確に反応

大陸からの高気圧が張り出して、平年とはちょっと違った夏の始まり。上空には寒気が残り、雲量多めだが、気温減率は良さそうな八郷盆地。全体的に弱めの風でシグマ10のロールアウトには最適と思えるコンディションに気分が弾む。今回は23サイズの推奨重量ど真ん中である80㎏にてインプレッションを行った。

ころころと風向きの変わるやっかいな状況だが、無風を待ってライズアップ。スッとキャノピーが立ち上がり、しっかり翼の形状を保っている。ラインの絡みがないことを確認しテイクオフ。アドバンス製品どのモデルにも言えることだが、とにかくライズアップが軽い。そしてしっかりと翼が形成されて、ガチっと安定する。リーディングエッジ部は3Dダイアモンドシェイピングという新しいテクノロジーを搭載している。これは、インテーク上面部分の曲面をジグザグに縫製することで、前後左右の張りが均等で滑らかな表面になり、パフォーマンスが向上するとのことだ。なるほど、ライズアップでもその恩恵を受けているのが感じ取れる。

テイクオフすぐ脇から立ち昇るサーマルを引っ掛けてファーストターンを入れる。ハンドリングはしっかりとした手応えで、引いたら引いた分だけ曲がるスポーティーな仕上がり。ミッドシップカーを彷彿させるターンの切れは踏襲されていて、ハンドリングはダイレクトで軽快そのもの。スルスルと一気に雲底まで導いてくれた。

 

最先端のテクノロジーでパフォーマンスの大きな飛躍

先行しているパイロットを追って筑波山へトランジット開始。滑空を始めてすぐに性能の向上を感じ「キターっ!」と心の中でガッツポーズ。

コンバージェンスラインを探り、良い上昇帯に翼を乗せながらアクセルを一段踏んでみる。踏み応えは割と軽め。スーッとスムーズに加速していく。さらに二段目を踏み抜いてみる。更に加速が増していくが、沈下率が変化することはない。スピードだけが上がっていくも翼は安定している。キョトキョト動くことはなく、安心感さえある。これは新採用のキャノピー中央付近にあるCワイヤーとトレーリングエッジにあるミニリブの効果なのだろう。Cワイヤーは最高の形状保持を実現していて、ミニリブはトレーリングエッジ表面を滑らかにするとのことだ。またシグマ10にはリアライザーにCハンドルが付いている。これも新採用だ。ブレークトグルを持ったまま、中指と人差し指をCハンドルにかけてみる。翼からの情報がCハンドルを通して伝わってくる。フルスピード時にも微妙なコントロールができるのが嬉しい。

あっという間に先行グループに追いついた。飛躍的に向上した滑空性能に驚くばかり。シグマ史上一番の6.16のアスペクトでありながら、キョトキョト動く様なことは全くない。とにかくピッチとロールが安定している。

筑波山をゲットして朝日峠を東に向かう。雲底は低く、雲の脇をすり抜ける。

Aライザーはスプリットしていて、外翼につながるラインが赤くなっている。ラピッドリング付近に指を引っ掛けて翼端折りをしてみると、カンタンに翼端折りをすることができた。翼の回復もブレーク操作で簡単に戻すことができた。このクラスで翼端折りが安定してできる機体も珍しい。

雲中に入らないよう山を離れて石岡のグランド方面へ移動。石岡の街の上空で雲が発達し始めてしている。

 

バランスのとれたピッチとロールの挙動 
乱流の中でも抜群の方向安定性

アクセルを使用してサーマルに飛び込んでみる。フルスピードからの速度をそのままサーマル内で旋回し上昇に転じる。バリオが上昇音を響かせてグングン高度を上げていく。ラフなコンディションでも翼はカッチリと形状を維持し、パイロットの意思を忠実に受け止めてくれる。龍神山を横目に吾国山をゲットして、燕山へ移動。なんとか八郷一周をコンプリートできた。

なかなか難しいコンディションだったが、シグマ10の性能に驚きつつも楽しみながらフライトができた。気が付けば2時間以上も飛んでいる。高度を下ろすのにスパイラルを入れてみる。反動をつけずにゆっくりと深くブレークを引いていく。徐々に旋回半径が小さくなり、スパイラルへ入っていく。外翼のスピードコントロールをしながら、スパイラル時の挙動を見るも、翼剛性の高さを感じる。引き込んだブレークを戻せばスピードも落ちて通常滑空に簡単に戻ることができた。

最後はランディング時の低速を試すべく、少し高めに侵入してみる。低速の利きも素晴らしく、ブレークコードを通じてストールポイントも分かりやすい。

 

ロングフライトも疲れることなく飛行可能

長時間のフライトでも疲れることがない。それは翼が余計な動きをせず、翼の情報を最適化し必要な情報のみをパイロットに伝える。空域が荒れた時ほどシグマの本領は発揮される。

とても良好な滑空性能と、軽快なハンドリング、そしてピッチとロールの安定性。もちろん軽量でいてコンパクトに収納できる。

クロスカントリーには絶対に必要条件を全て備えている伝説の翼、シグマ10。

全てから解放されて、空を自由な空間に変えてくれる。そんな理想的な翼と言えるだろう。

2017 10 PARA WORLD

 

スペックデータ

SIGMA10    21 23 25 27 29
セル数   66 66 66 66 66
ライザー   3 3 3 3 3
翼面積(実測) m2 21 22.9 24.5 26.4 28.4
翼面積(投影) m2 18 19.6 21 22.6 24.3
アスペクト比(実測)   6.16 6.16 6.16 6.16 6.16
アスペクト比(投影)   4.6 4.6 4.6 4.6 4.6
理想的なテイクオフ時の重量 kg 65 – 75 75 – 85 85 – 97 97 – 110 110 – 125
認証重量 kg 60-77 70-88 80-100 92-114 105-128
グライダーの重量 kg 4.45 4.75 4.85 5.15 5.45
ライザーの最大長 cm 48 48 50 52 52
アクセレーター最大可動域 cm 14 15 16 17 18
認証クラス   D* C C C C

 *スパイラルのみD認証。他はCとB以下。


対角線でスライスされ最適化された張力と重量 翼内部の完璧な負荷分散をします。

3Dダイアモンドシェイピング
インテーク上面部分の曲面をジグザグに縫製することで、滑らかな表面を作る。

前モデルよりラインが11%少なくカスケードも15%少なくなっている