イオタ2のインプレッションレポート

NEW GEAR IMPRESSION

ADVANCE IOTA2

REPORT : Rikiya NISHINO

 

あらゆる条件で最高のパフォーマンスを発揮し

心からリラックスしてフライトできる安心感

2つの相反する要素を高い次元で癒合させた

新時代の翼がイオタ2だ

 

─Efficient Performance─

 

ファーストインプレッションは高性能機に似た乗り味

よく飛ぶとかよく浮くという性能や、安心して気持ち良く飛べる安全面の性能を求めたりと、パラグライダーに求めるものは人それぞれだ。

今回のイオタ2はとても興味深い翼で、ファーストインプレッションと色々な風で飛んだ後の感想がこんなにも変わった翼は珍しい。

最初に試乗した時は、翼の内部構造の向上や後縁部に配したバテン(Cワイヤー)、さらには浅くなったアーチの影響などにより、前作に比べ高性能機に似た乗り味(ハイアスペクト機によくある翼全体がヨウ方向にキュキュっと動く挙動)を感じ、ハイエンドとはいえBクラスに乗る人がこの挙動に反応できるのか? 前作のイオタは特にバランスに優れた翼だっただけに、随分高性能側にシフトしてしまったのだな…と少し懐疑的な感触を抱いていた。楽しみで空を飛ぶのに高性能機によくある緊張感は必要ないのでは? と常々思っている。イオタ2が高性能側となった事に対し、少し残念な印象すらあった。

その後、色々な風で飛ぶ機会があり、飛ぶ度に「ん?あれ?」と思う事が増え、このキュキュっと動く感覚は今までのパラグライダーにあった「揺れ」とは違うことに気づき始めた。反応しないとより大きく揺れたり潰れたりするものではなく、翼が風に対応している動きなので、忙しく反応する必要はない。この絶妙なバランスに慣れると、乱れた空域で翼を真っ直ぐ飛ばすことや、揺らさずに飛ばすことが今までよりも安心して行える。ゆとりも増え、これが新時代パラグライダーなのだという確信に変わった。

 

高性能と安心感

2つの性能を兼ね備えた次世代機

5〜6m/sのサーマルブロー混じりの乱れた強めの風で飛ぶ機会があり、少々緊張しながら飛び出した。通常ならこのような風の場合、テイクオフ前でソアリングしながら、暴れる翼を制御する操作に忙しくなるのだが、少し拍子抜けするような感覚でまるで風が穏やかになったかのような安定感さえ感じていた。

初めは半信半疑だったが、しばらく飛びながら観察すると乱れた風を受けた側の翼が持ち上がったり、後退してテンションが抜けたりすることが少なく、翼全体が1つになって変化のある風に対応しているような動きを見せている。この感覚はハンググライダーの操作感にも通じている。

前述したように乱れた空域の中で真っ直ぐ飛ばすと、この機体のポテンシャルの高さがより際立ち、とても感じ易く楽に飛ばすことができる。高い滑空性能はもちろん、乱れた空域でも上昇成分で確実に高度を上げながら突き進む感覚と、一体感のある安定した

翼から安心感を得ることもでき、相反する2つの性能を見事に兼ね備えた次世代のグライダーなのだ。

乱れた風を逃す柔軟性と翼全体で反応する程よい剛性感、さらに機体重量は軽いから旋回時の操作感はイメージ通りに動いてくれ遅れることはない。操作感に関しては、カッチリとした安定感が損なわれることなく、ムラのないロールイン、バンク、ロールアウトが思いのままイメージ通りに動いてくれる感覚だ。

 

アドバンスのスゴイところ

アドバンスのシリーズは、どれも10世代とか9世代といった長い伝統を持っている。新モデルがリリースされる度に毎回感心させられるのは、乗り味がシグマならシグマのまま、イプシロンやアルファもそのままの顔で性能や安心感がアップして来ていることだ。

その中でイオタシリーズは3年前に加わった新しいラインだ。初のモデルチェンジなので当然興味を持っていたが、期待を裏切ることなく、びっくりするようなポテンシャルを持つ翼に仕上がっていた。

 クラスを超えるような高性能さは、最近のグライダーには珍しいことではない。イオタ2に関しては、高性能=リスクが増えるという感覚は全くなく、乗るほどに翼のバランスの良さを感じ、今までよりももっと空を楽しめる最高の友となるだろう。乱れた空域でわざわざ試乗する必要はないが、滑空する角度を心から楽しめる翼だ。安定感は抜群で少々乱れた風でも余計なピッチは起きにくく、飛び終えた後の仲間との会話でも「今日は荒れていたね〜」という時に、あなたは「どこが?」という思いが浮かびそうな、そんな翼に仕上がっている。

 

手足に翼が生えたような感覚

よく飛んで安心感のある機体なんて…と思うだろうが、試乗すればこの意味が理解できるだろう。普段のフリーフライト、もちろん大会でも、翼の安定感によりリラックスして飛べることはひとつの性能だ。〝あなたの技術やセンス〞が最大限に発揮され、今まで以上に挑戦したり、楽しめたり、良い成績が出せたりするに違いない。

このグライダーを楽しく飛べるレベルは、毎月定期的にエリアに通いコンスタントに飛んでいる人。はじめに書いた通り、どの揺れは無視できて、どの揺れは操作が必要かの見極めは必要になる。なんでもかんでも放っておいたらダメだが、じっくり慣れるように付き合って行けばステップアップの人にも十分乗りこなせる翼だ。

そしてCクラスに乗っていて、空で緊張する場面がある人にもオススメだ。強いサーマルでのフライトに慣れている方ならば、そんな風で飛んでみよう。きっと翼が生えたように自分が飛んでいる感覚で空を楽しめる。

2018 3 IMAIHAMA


スペックデータ

IOTA2   21 23 25 27 29
セル数   59 59 59 59 59
ライザー   3+1 3+1 3+1 3+1 3+1
翼面積(実測) m2 21.8 23.7 25.7 27.7 29.7
翼面積(投影) m2 18.8 20.4 22.2 23.9 25.6
アスペクト比(実測)   5.6 5.6 5.6 5.6 5.6
アスペクト比(投影)   4.23 4.23 4.23 4.23 4.23
理想的なテイクオフ時の重量 kg 65 – 75 75 – 85 85 – 97 97 – 110 110 – 125
認証重量 kg 60-77 70-88 80-100 92-114 105-128
グライダーの重量 kg 4.3 4.6 4.85 5.15 5.4
スパン m 11.1 11.5 12 12.5 12.9
スパン(投影) m 8.9 9.3 9.7 10.0 10.4
認証クラス   B B B B B