NEW GEAR IMPRESSION
ADVANCE OMEGA XALPS2
REPORT : Akira Izawa
気負うことなく沸き上がるモチベーション
卓越した安定性が積極的な操作へと導びき
より遠くに飛んでいけるという確信に変わる
エックスアルプスという競技が生んだ機体の
当たり前で必然のパフォーマンスに誰もが驚くことだろう!
ハイエンド
クロスカントリーウイング
オメガエックスアルプス2という名の翼。その響きは、言わずと知れたヨーロッパアルプス横断レースの為の乗り手を選ぶ究極のギアだ。そうした先入観は、初めて乗ったその日に簡単に消えた。以降、競技や普段のフライトを通し、その扱いやすさとパフォーマンスのバランスの良さを、日に増して実感している。
そういえばパラを始めた28年前、片手でキャノピーバッグを背に担ぎあげ、標高数百メートルを足で稼ぎ、テイクオフの風をあまり選ばずに飛び出し、そして大気の挙動を感じていた。装備の軽さこそは似ているが、その頃とは大きく違い、より長く、遠くへとフライトできるよう進化したのは驚くばかりだ。
翼と体の一体感
装備重量は88㎏。80から95㎏という推奨スターティング重量のほぼ真ん中で乗っている。グライダーの自重は3・3㎏ほどしかない。この機体の魅力はなんといっても一体感だ。立ち上げも少しのテンションで癖なくスっとあがりとても簡単だ。キャノピー重量が軽いので、非常にリニアに翼の動静が体に感じられる。それはまるで腰から翼が生えている感覚だ。
最近、基礎体力の低下を補うためにランニングをしている。心がけるのが骨盤を中心に、その内外上下の大きな部位で走るということ。怪我をしづらく疲れない走り方だそうだ。この走りの時、腸骨筋を使うよう意識をすると自然にストライドが伸び、地面を面でとらえて滑る様な感じになる。
エックスアルプス2を腰で乗る感覚は、ライトネス2を使用しているから。フットバーに沿える足への加圧のサポートとで、キャノピーのロール・ピッチ・ヨー全ての動きを安定して面で、背中で感じることができる。大気中をキャノピーが滑る感覚はランニングに似ている。
加えてブレークコード操作は、キャノピーが得る浮力の反力を最大限推進力と上昇力に変えることができる。しなやかかつ安定した剛性が感じられるキャノピーと、面として直接的に感じることのできる操作性が、ともすれば急操作の部類となるブレーク動作も、空域の状況によってはポジティブな動作として許容される。
つまり大雑把な操作をもキャノピーが最適化してくれる。これは、荒れた空域で大きな利点だ。時に強烈で小さなサーマルが乱立する空域を荒れていると見なすことが多いが、この操作感覚は荒れた空域を感じる機会をかなり減らしてくれる。実際、フリーフライト後のチャットで「あの時のあそこは荒れていたね」とか、競技タスクでのレベル2とか3とかを、文字通りの感覚で同調することは多くはない。荒れた空域ほど、エックスアルプス2の真価が発揮されると言っても良いだろう。
エックスアルプス1からの進化
センセーショナルな、エックスアルプスの市販版登場から2年。セル数・アスペクト比を少し増やしたエックスアルプス2は、エックスアルプス1と比べていくつかの違いが感じられた。まだまだ乗り込んでいるとは言えず、その違い・特徴をつぶさに説明しきれないが、少し感じたことを紹介したい。
基本的には全面進化と言えるが、方向性の選択と言えそうな高いレベルでのわずかな優劣もある。まず、滑空の切れが少し良くなった。これを感じるのはサーマルの風下、正確には、風上に向かって45度から225度の半円部分でのターン。サーマル風下とキャノピー挙動の相性が良くないと、その半円部に入るときに切れが悪く、最風下部で旋回が流れてしまうか、詰まって沈む感じになってしまう。エックスアルプス2はこの感じが出にくい。
一方、究極操作での浮きを少し犠牲にした感覚を、希に受けることがある。滑空の切れを増す味付けとの方向性の選択の副次作用だと思う。ただしこれは、初級機がまれにコンペ機を凌ぐ浮きを発揮する場面があるというパラの普遍的現象に通じる。
サーマルへの指向力
サーマル間のトランジットで、何度も不思議な感覚を味わったことがある。まっすぐ飛ぼうとしても、ふと目標の飛行ラインからずれる。キャノピーはサーマルに吸い寄せられるとよく言われるが、キャノピー自身の重量が軽いからか、その傾向が強いのだろうか。かといって、キャノピー剛性不足で乱流に翻弄されるという感じもない。
昨今のハイエンド高アスペクト機が潜在的にもっている、ヨーの不安定さをほとんど感じない。それは面として、キャノピーの挙動を三次元で感じられるためなのかもしれない。ゆえにサーマル指向性に活かせているのだと思う。
ウェイトパフォーマンス
そんな単語は存在しないが、オメガエックスアルプス2は、〝ウェイトパフォーマンス〞が最高だ。ウェイトパフォーマンスが高いと、単純に楽しい。楽で愉しい。軽さは性能だ。
必要以上に気負うことがなく、モチベーションが上がる。積極操作側にコントロールの幅が広がり、飛びのバラエティが増える。性能がものを言い、飛び方の選択肢が限られるハイエンドな競技より、クロカンが向いている。エックスアルプスという競技から生まれたこの機体の、当たり前で必然の評価に、改めて安心感をもってたどり着いた。
2017 12 23
スペックデータ
OMEGA XALPS2
翼面積(実測) | m2 | 22 | 23 | 24.55 |
翼面積(投影) | m2 | 18.9 | 19.7 | 21.0 |
テイクオフ時の推奨重量 | kg | 70 – 85 | 80 – 97 | 90 – 110 |
グライダーの重量 | kg | 3.3 | 3.5 | 3.7 |
翼幅(実測) | m | 12.45 | 12.73 | 13.15 |
翼幅(投影) | m | 9.94 | 10.16 | 10.5 |
アスペクト比(実測) | 7.05 | 7.05 | 7.05 | |
アスペクト比(投影) | 5.25 | 5.25 | 5.25 | |
セル数 | 69 | 69 | 69 | |
ライザー数 | 3 | 3 | 3 | |
認証クラス | EN / LTF D | EN / LTF D | EN / LTF D |
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