シグマ9のインプレッションレポート

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NEW GEAR IMPRESSION

ADVANCE SIGMA 9 

REPORT : Masayuki Matsubara

 

マーケットを常に牽引してきたアドバンス。
そのグライダーラインナップの中でも、もっともアドバンスらしさを体現しているのがSIGMAシリーズ。
1989年のファーストモデル以来、SIGMAは軽快かつ鮮やかなハンドリングで、スポーツクラスのベンチマークを飾ってきた。
そして9世代目を迎えたSIGMA 9。今回の改良によって、どのような進化を遂げたのか、その実力を検証する。

妥協なきモノづくりから
生まれるスペシャルモデル

シグマ9の開発は、パラグライダー史でもっとも長い歴史を持つもののひとつ。
新製品の開発には常に多くの時間が費やされる。前モデルより、あらゆる点で優れたものであると同時に、マーケットでの新しいベンチマークを確立しなければならず、さらに新製品が一つの領域で際立つだけでなく、一貫したトータルパッケージとして印象づける必要がある。
1年をかけて、アドバンスチームは開発を続け、コンピュータ上で200件を超えるシグマ9のプロトタイプを分析。このソフトウェアの責任者はハーネス・パペッシュだ。それら200件の分析のうち、25件は実際に翼を造り、広範囲に渡りテスト。これらの分析で、競合の3つのベンチマークサンプルと定期的に比較。
そして、「シグマ9のプロトタイプが、私たちが定義したすべての基準において他のグライダーに勝った時、開発が完了した」という。このメーカーからのメッセージに、期待度は最大値をマーク。早速フライトに取り掛かることにしよう。

軽量化のアドバンテージ

インテークに軽く風を入れるだけで、ふわっとグライダーが立ち上がり始める。なんて軽やかな翼だろうか。自重4・55㎏のクラス最軽量が、このライズアップを可能にしているのだろう。
ライザーを持つ手首を軽く反しただけで立ち上がってくるのだ。インテーク周りだけにプラスティックバテンを使用して、軽量化に成功している効果だろう。
頭上に収まったところでラインチェック。軽くブレークを抑えるだけで、ピタッと頭上安定。実に扱いやすいグライダーだ。

伝説的なハンドリング

揚力を感じてテイクオフ。グライディングに入ると、いつも乗っているイプシロン7とは明らかに違う滑空性能に心が弾む。
ファーストサーマルに突入し、ターンを開始。最初のターンは注意深く慎重に引き始める。ブレーク引き始めと同時にグライダーが反応を始める。実にダイレクトなハンドリングだ。この滑空性能を持ちながら、シャープなハンドリングを融合させているのは流石アドバンス。自在にコントロールできる感じだ。
最初のターンを終えて、グライダーの特性が見えてきたところで、さらに積極的にサーマルを追いかけてみる。
ターン中、更に深くブレークを引いてみる。クンッと翼が反応し、クルッとその場でターンをするかの如くサーマルを掴む。上昇音がアップテンポに変わる。これぞシグマの真骨頂だ。
ミッドシップカーを彷彿させるシャープ、かつクイックなハンドリングは、代々受け継がれてきたシグマシリーズそのもの。ダイレクト感が付け加わって、さらに旋回性能が向上した感じだ。

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5・8の低アスペクト比が織りなす扱い易さ

しばらくサーマルを追い続け、気が付けば雲底まであと少し。サーマルが崩壊をはじめ、気流が荒れ始めたところで離脱する。ラフな気流の中でも安定している。グニャグニャと左右の翼が別の動きをするようなことはない。
5・8の低アスペクトならではの安心感だ。
飛んでいて驚いたのは、グライダーがパイロットへ伝達する情報量の丁度良さだ。
通常、僕たちが空を飛ぶ時は、気流の状態をグライダーが受け、そこから発信する情報を感じ取って操作している。その情報が多すぎると、処理スピードが追いつかなくなり、恐怖心に変わることが多い。特に春のホットなコンディションではパイロットの情報処理能力が問われる。経験豊富なパイロットなら、多くの情報をグライダーが送ってきても、すぐに処理できるので上手く飛ばすことができる。
シグマ9は絶妙な情報加減なのである。グライダーが情報を吸収し最適化、伝えるべき情報を必要な分だけパイロットに送る。そういった印象を受けた。これが乗りやすさと安心を感じさせるひとつの理由と言えるだろう。

優れたパフォーマンス

通常のグライディングからアクセルを踏み込んでみる。アクセルは非常に軽い。機速が上がり、スーっとスムーズに加速しはじめる。風切り音が変わり、スピードが上がっていく。いくつかサーマルをスキップしてみるも、挙動は安定している。高速時でも信じられないほどの安定っぷり。テクノロジーの進化に驚くばかりだ。
コンディションが続く限り、いつまでも安心して飛んでいられる。妙な気疲れはまったくない。空を飛ぶってこんなに楽しいものなのだと実感させてくれる。そんなグライダーだ。
しばしのフライトを楽しんで、そろそろランディング体勢にはいる。果たしてランディング時の低速はどんなものか。
サクサクっと切り替えしをしながら、高度処理をしてファイナルアプローチ。少し高めに入ってみる。ターゲットをめがけて低速時の感触をみる。低速もよく粘る、良い機体だ。そしてランディング。
これはもう、9世代目のシグマの名に相応しく「素晴らしい!」の一言に尽きる。非常にバランスの良く取れたグライダーだ。曲がる、浮く、走る、止まるが、当たり前のように高次元で実現されていることに驚かされる。それでいて、扱いやすい。これ以上の何が必要だろうか。
飛んでいて楽しい! この楽しさをあなた自身で感じてみていただきたい。あの、楽しくてワクワクする空へ、新しいシグマ9が連れて行ってくれることは間違いない。

2014 10 PARA WORLD

スペックデータ

SIGMA 9 23 25 27 29
翼面積(実測) m2 22.5 25.0 27.0 29.0
翼面積(投影) m2 18.8 20.9 22.5 24.2
テイクオフ時の推奨重量 ** kg 60 – 85 75 – 100 90 – 115 105 – 130
グライダーの重量 kg 4.55 4.9 5.25 5.55
アスペクト比(実測) 5.8 5.8 5.8 5.8
アスペクト比(投影) 4.1 4.1 4.1 4.1
翼幅(実測) m 11.5 12.1 12.6 13.0
翼幅(投影) m 8.8 9.3 9.6 9.9
トリムスピード * km/h 39 (+/- 1) 39 (+/- 1) 39 (+/- 1) 39 (+/- 1)
マックススピード * km/h 55 (+/- 2) 55 (+/- 2) 55 (+/- 2) 55 (+/- 2)
セル数 59 59 59 59
ライザー数 3+1 3+1 3+1 3+1
認証クラス EN / LTF C EN / LTF C EN / LTF C EN / LTF C

* 推奨重量範囲内で、装備重量・グライダーサイズにより変動します
** パイロット、パラグライダー、全装備を含む


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