NEW GEAR IMPRESSION
ADVANCE IOTA
REPORT : Masayuki Matsubara
1988年の創立以来、ポリシーと独自のアイデアで開発製造を手掛けてきたアドバンス。
パラグライダーメーカーの中でも老舗中の老舗でファンも多い。
そのアドバンスが誇るスタンダードラインナップに新しいモデルが投入された。
「イオタ」はイプシロンとシグマの間に位置する、セミライトカテゴリのハイエンドB。
イプシロン7の扱い易さと、シグマ9の高性能を併せ持ったグライダーとのことだ。
満を持してのハイエンドBクラス、早速インプレッションしてみよう。
軽さという性能
セミライトカテゴリ
スタンダードラインナップが追加されるのは四半世紀ぶり。新しいシリーズの登場にワクワクする。
サーマルタイムをじっくり待ってフライトの準備。まずグライダーの軽さに驚く。自重4.45㎏(23)はライトネス2(2.8㎏)との組み合わせで全装備10㎏を下回る。これなら普段の取扱いも楽ちんだ。
今回はIOTA23(60㎏~85㎏)をスターティングウエイト83㎏。ほぼ上限でのフライトだ。
そよそよとサーマルブローが入り始めた頃、いよいよグライダーを広げる。アスペクト比は5.5。ハイアスペクトではなく控えめな感じだ。ラインは全てエーデルリット製のアラミドライン。絡みづらく伸縮がほとんどないとのことだ。
エアインテークはシグマ9と同様にSCOOPを採用している。インテークだけを見ればハイエンドBとは思えない戦闘的な顔立ちといえるだろう。
扱いやすく、ハイパフォーマンス
バランスの良さが際立つ
ブローを待ってインテークに風を入れる。スッと軽く立ち上がってくる辺りはアドバンスらしい。軽く手首を反すだけでライズアップできる。頭上に来たところでブレークをあてる。ピタッと頭上安定する。実にイージーだ。イプシロン7を思わせる扱いやすいさだが、揚力は強い。翼が飛びたがっているのが伝わってくる。ゆっくりとブレークをリリースしてテイクオフ。
テイクオフしてすぐにサーマルをヒット。最初のターンは軽めに入れてみる。ブレークのテンションは柔らかめだが、しっかりとサーマルの手応えは伝わってくる。数回のターンで感触を確かめてから一気にサーマルに食い込ませる。クンっと翼がサーマルを捉え、スルスルと上昇に転じていく。やはりターンはアドバンスらしく、キレが良くタイトターンが驚くほど簡単に決まる。浮きの良さに扱い易さも加わって、この日最初のサーマルで雲底まで一気に上り詰めることができた。
サーマルから離脱してグライドを開始する。滑空の感じは確かにシグマ9を彷彿させる。明らかにイプシロン7とは異なるグライドフィーリングだ。前方に浮かぶ雲を目がけてアクセルを踏んでみる。アクセルの踏み応えは軽い。踏み込みと同時に風切り音が変わる。SPi(スピードパフォーマンスインジケータ)によって踏み込み具合が視覚的に分かりやすい。
フルスピードのままサーマルに飛び込んでみる。バリオサウンドの上昇音とともにアクセルオフ。同時にセンタリングを開始すると、グライドスピードがそのまま上昇に転じ、グングン上がっていく。この日最大+9m/sのサーマルでも翼はビクともしない。信じられないほどの翼剛性だ。そして安定していることに驚くばかりだ。これはコンピュータ分析によってダイアゴナルリブの軽減と最適化に成功。まるで穴だらけで固いひと塊のスイスチーズを連想させる。驚くほど軽量で丈夫な翼なのだ。
コンディションが整い始め、続々とハイアスペクトのグライダーが上空に集まり始める。せっかくなので他メーカーのコンペティションモデルと一緒にグライドをしてみる。若干フォローを背負っていることもあってか、ほぼ一緒にグライドしている。Bクラスとは思えないほど良く飛ぶグライダーだ。
イージーパフォーマンス
自由自在の操作性
降下手段をチェックしてみる。まずはビッグイヤー。専用のライザーを引き込むだけで簡単に翼端が折れる。ライザーから手を放せば勝手にグライダーが元に戻る。良くできている。
次はスパイラル。ターンを深く入れてみる。片方のブレークを深く引き込んでホールド。これもシグマ9と同様にハンドリングの切れが良く、スパイラルに入っていく。ブレークを戻せばスーッと通常滑空に戻る。実に簡単な操作で思い通りに翼をコントロールできる。
これはイオタのキャノピーが軽いため、グライダーの慣性がとても小さいゆえのもの。
世界最高水準の
アドバンステクノロジー
少し高めにランディングに侵入してみる。ブレークを抑えこみ、ターゲットを目がけて低速を効かす。実によく翼が粘る。低速時の翼の粘りをブレークプレッシャーで簡単に感じることができるのもイオタの特徴だ。
新しい翼「イオタ」。今までこんなに楽しい翼があっただろうか。サーマルがある限りずっと飛んでいても全く疲れない。それは操作がしやすいことと、翼が安定していること。この二つが織りなすアドバンステクノロジーの賜物だろう。
今までのクロスカントリーフライトがより快適になること間違いない。イオタによってあなたのレコードがリロードされ、フライトライフが充実することは間違いないだろう。
2015 1 TSUKUBA
スペックデータ
翼面積(実測) | m2 | 23 | 26 | 28 | 30 |
翼面積(投影) | m2 | 19.2 | 21.6 | 23.3 | 24.9 |
テイクオフ時の推奨重量 | kg | 60-85 | 75-100 | 90-115 | 105-130 |
グライダーの重量 | kg | 4.45 | 4.85 | 5.15 | 5.45 |
アスペクト比(実測) | 5.5 | 5.5 | 5.5 | 5.5 | |
アスペクト比(投影) | 3.9 | 3.9 | 3.9 | 3.9 | |
翼幅(実測) | m | 11.35 | 11.95 | 12.45 | 12.85 |
翼幅(投影) | m | 8.65 | 9.15 | 9.45 | 9.75 |
トリムスピード | kmh | 38.5 (+/-1) | 38.5 (+/-1) | 38.5 (+/-1) | 38.5 (+/-1) |
マックススピード | km/h | 53 (+/-2) | 53 (+/-2) | 53 (+/-2) | 53 (+/-2) |
認証クラス | EN/LTF B | EN/LTF B | EN/LTF B | EN/LTF B | |
セル数 | 59 | 59 | 59 | 59 | |
ライザー数 | 3+1 | 3+1 | 3+1 | 3+1 |