オメガエックスアルプス インプレッションレポート

DCIM100GOPRO

NEW GEAR IMPRESSION

ADVANCE OMEGA XALPS 

REPORT : Masayuki Matsubara


世界選手権やワールドカップのレースで数々のタイトルを獲得してきたオメガシリーズ。

アドバンスが誇るフラッグシップモデルだ。
オメガ8がリリースされてから5年、新しいオメガは超軽量モデルとしてリリースされた。
その名はオメガエックスアルプス。
エックスアルプス2015で勝つために作られ、その目的はクリスチャン・マウラ―とセバスチャン・フーバーのワンツーフィニッシュという結果で達成された。
1000㎞以上にも及ぶヨーロッパアルプスのレースで実証されたその性能は、いったいどのようなものなのだろう。

毛無山の山頂がちらちら紅葉しかかった10月初旬、オメガエックスアルプスのロールアウトを朝霧で行った。北東に台風が接近し、北風が押し気味なコンディション。台風は足早に遠ざかり、南寄り強めの風に変わる予報だ。
朝一番でテイクオフへ上がり、グライダーをチェックしてみる。
付属のコンプレッションバッグに収まったグライダーは小さくコンパクトになっていて、
今回使用する22サイズは22.8㎡で重さ3.4㎏(オリジナルライザー仕様)と、とても軽い。広げてみるとPiを思わせる軽くてしなやかなセイルは全体をポルシェスポーツスカイテックス27g/㎡の軽量素材を使用。要所を32g/㎡で構成している。軽量素材を使用しつつも丈夫で従来グライダーに近い耐久性とのことだ。
特別販売ということもあって、ザックもパッキングベルトも付属していない。
ライトネス2付属のライトパック2を使うとぴったり収まる感じだ。

アサイチの一番おいしい空をファーストイン

22のスターティングウェイトは75㎏から95㎏のレンジになっている。今回は85㎏のど真ん中でチェックしてみる。まずはグライダーを広げて立ち上げ。ブローのタイミングでライズアップするとふわりと立ち上がってくる。驚きの軽さだ。ブレークを引いて頭上で止めてみる。6.9のアスペクトを感じさせないがっしりと安定したフィーリングだ。左右に暴れることもなく、ピタリと頭上安定している。この辺りはシグマやイオタと大差なく感じる。加速をしてテイクオフ。すぐ目の前のサーマルを掴み、ゆっくりとターンを繰り返してみる。最初は慎重にブレークの重さ、ターンの切れを確認しつつ、強めのサーマルで一気に旋回へ移行する。スルスルと上昇に転じて高度を上げる。ブレークは重めだが、サーマルの手応えをしっかりと感じることができる。ターンの切れは見事。これぞアドバンスといった感じ。シャープな旋回はアドバンスファンを魅了してやまない切れ味の良いハンドリングに仕上がっている。
10時前のまだ弱いサーマルなのに、スピードをしっかりと上昇に転じていく。前山からのサーマルに乗り続けて熊森山まで取り付いてしまった。22㎡の小さい翼とは思えない力強い浮力が感じられる。

誰もいない朝霧ハイウェイに乗って、天子岳に向ってグライドを開始する。グライド中の翼を見てみると軽量グライダーとは思えない、がっしりとした安定感を感じる。一昔前のグライダーなら、ちょっとしたリフトに当たればふわりふわりしていたが、小型化によって翼面荷重がしっかりとかかり、リフトに当たっても上昇成分を受けながらしっかりと前進していく。テクノロジーの進化にただただ驚くばかりだ。

鉄塔を越えた辺りでアクセルを一段踏んでみる。アクセルは重めで、踏み始めから機速が上がるのが分かる。スピードは出ていても翼の挙動は安定している。
天子岳のラフな空域に入っていく。乱気流の中でもしっかりと加速しつつも安定している。そのまま二段目を踏み抜いてみる。あまりの加速感に一瞬怯んで戻してしまう。
タイミングをみて、もう一度二段目を踏む。これがエックスアルプスを制覇したスピード。パラグライダーの出せるスピードとはとても信じられない驚きの加速をする。しかも翼はガッチリと安定している。

ひとり朝霧を満喫し、そろそろ猪之頭に戻る。戻りながらアクセルを踏んでは戻しを繰り返す。大幅な加速をするくせにピッチが驚くほど安定している。この安定感がラフなヨーロッパアルプスでも安心してアクセルを使うことができる最大の理由だ。これはアドバンス社が独自開発したソフトウェアによって、翼にかかる全方向の力のベクトルをシミュレートしているからだろう。

1時間ほどのフライトを終え、猪之頭に戻ってきた。Aライザーを見てみると一番外側のラインに赤のカバーがしてある。これは……翼端折りができるのか? 試しに外側のラインに指をかけて引き込んでみる。翼端は折れ、ビッグイヤーでフライトしている。ブレークを軽く当てれば簡単に回復することもできた。

北風だったランディングは南風に変わり始め、空域が荒れ始めた。ランディングからポコポコとサーマルが発生し、リフトを良く拾う。とても降りづらい状況だが、翼はしっかりと安定し、変な挙動は一切しない。低速をギリギリまで使ってみる。ストール間際のブレークの感触も分かりやすく反応がしやすい。そしてランディング。

一切の妥協をしないアドバンス社が、エックスアルプスで勝つために作った翼、オメガエックスアルプス。
全てのチェック項目において、想像を遥かに超える高次元で達成していることに改めて驚いた。
エックスアルプスへ出場したグリーゲルとフーバーだけに与えられた翼だが、特別版として販売を決定し、国内でも数名の選ばれたパイロットが既に飛んでいる。
誰にでも与えられるものではない翼であるが、この完成度の高い翼を多くのエキスパートパイロットに知って欲しい。

2015 10 23

 

 

スペックデータ

OMEGA XALPS

翼面積(実測) m2 22.15 24.1
翼幅(実測) m 12.4 12.94
アスペクト比(実測) 6.9 6.9
テイクオフ時の推奨重量 ** kg 75 – 95 90 – 110
グライダーの重量 kg 3.15 3.35
セル数 63 63
ライザー数 3 3
トリマー なし なし
認証クラス EN / LTF D EN / LTF D

** パイロット、パラグライダー、全装備を含む

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